テンポを合わせるというのは、とくに音が絡む場面では重要です。自分の感覚世界のみですとやさしいことのように思える「テンポ合わせ」ですが、たくさんの人が集まればむつかしさも"ひとしお"です。曲の理解という意味でも指標がほしいですね。ここでは曲のもつ、テンポ・速度をあらわす用語をスピード順に見ていきましょう。
Largo ラルゴ |
幅広くゆるやかに ドイツ語ではBreit(ブライト) |
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Lento レント |
ゆっくりと(のろく) ドイツ語ではLangsam(ラングザム) |
Grave グラーヴェ |
重くゆっくりと、荘厳な雰囲気を持たせるようにゆるやかに |
Adagio アダージョ |
ゆっくりと、ゆるやかに |
Adagietto アダージェット |
アダージョよりもやや速く |
Andante アンダンテ |
歩くような速さで ドイツ語ではGehend(ゲーエント) |
Sostenuto ソステヌート |
アンダンテとほぼ同じ速さで(ささえられた)、各音を十分に保つ |
Andantino アンダンティーノ |
アンダンテよりもやや速く |
Moderato モデラート |
中くらいの速さで、節度をあらわす ドイツ語ではMässig(メーシヒ) |
Allegretto アレグレット |
やや速く(アレグロよりもやや遅く) |
Allegro Moderato アレグロ モデラート |
適度に快活な(やや速く) |
Allegro アレグロ |
快活に、速く、陽気にはつらつとした ドイツ語ではSchnell(シュネル) |
Animato アニマート |
はつらつと、いきいきとした |
Vivace ヴィヴァーチェ |
活気のある(アレグロより速く) |
Vivo ヴィーヴォ |
いききと |
Presto プレスト |
急速に ドイツ語ではEilig(エイリヒ) |
Allegrissimo アレグリッシモ |
prestoとほぼ同じ速さで |
Vivacissimo ヴィヴァチッシモ |
ごく活発に |
Prestissimo プレスティッシモ |
出来るだけ早く |
ずいぶんたくさんありますが、これらはすべてイタリア語です。一部ドイツ語も表記しましたが、速度的な意味として一致している言葉を併記したまでです。厳密に言葉の意味が一致しているわけではありません。
ACミラン(サッカー競技)で優勝した監督でアッレグリさんという方がおりましたが、アレグロよりもアッレグロというほうが本来の発音に近いかもしれません。覚え方は人それぞれでしょうから、すこしずつ吸収してみてください。
ドイツやフランスにも偉大な作曲家がたくさんいますので、細かな指示などは母国語で記してある場合が多いです。覚えることはまだまだありますし、簡単な挨拶なども各言語で出来るようになるのが好ましいかもしれませんが、ここではよく使われる形容詞などを確認してみましょう。
con brio コン ブリオ |
生き生きと |
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Con moto コン モート |
動きをもって |
(Un) poco ウン ポコ |
すこしの意 (遅い速度記号と結びついた時)、すこし速く (速い速度記号と結びついた時)、すこし遅く |
più ピウ |
さらにすこしだけ(速く、遅く) (遅い速度記号と結びついた時)、さらに遅く (速い速度記号と結びついた時)、さらに速く |
meno メーノ |
さらにすこしだけ(速く、遅く) (遅い速度記号と結びついた時)、今までより速く (速い速度記号と結びついた時)、今までより遅く |
molto, di molto, assai モルト、ディモルト、アッサイ |
きわめて ドイツ語ではsehr(ゼーア) |
Tempo di テンポ ディ |
・・・の速さで Tempo di marcia(行進曲の速さで) |
tempo rubato テンポ ルバート |
テンポに制限されず、自由に |
Tempo giusto テンポ ジュスト |
(ルバートの対語として)正確なテンポで |
ad libitum アド リビトゥム |
アドリブ(ラテン語) 自由に |
Doppio movimento ドッピオ モヴィメント |
二倍の速さで |
Tempo primo テンポ プリモ |
もとの速さで。a tempoとも表記される |
ritardando リタルダンド |
rit.とも表記される。おそくして(slentandスレンタンド) |
accelerando アッチェレランド |
加速して(stringendストリンジェンド) |
smorzando ズモルツァンド |
ローソクの火が消えるように、やわらげて |
morendo モレンド |
いのちの絶えるように、しだいにゆるやかに |
このほか、接続詞なども母国語のまま表記されているケースもあります。演奏家に求められるのは、言葉を覚えるのと同時に、多少間違っても良いから、曲を理解し演奏にキレを持たせていくということでしょうか。poco、assaiやmeno、piùの使われ方については次頁デュナーミク(音の強弱)のページでも解説しています。