さて、今回は少し実践的な講座にしてみましょう。あちらこちらで見かけるツーファイブというコード進行についてです。私はコード進行という言葉自体があまり好きではないのですが、主音を1とした場合、2番目から5番目への進行になります。2番目はサブドミナントの代理機能があるというのは学習済みですが、そのままドミナントへ進む進行です。
たとえば以下の自作曲を聴いてください。
音楽理解が深まれば、量産体制というか、どこから切り込んでも良いフレーズは作れますし、そこからの展開力も大きく変わってくるでしょう。しかし音楽学習に行き詰っている方にとってはどうでしょうか。ピアノでDm7とG7を繰り返し弾いても今一つガツンと来るものを感じないかもしれません。
やはり「理論」の部分と「本質の理解」の部分には差があるのですね。TOEICで800点を獲得しても、映画見たり、インタビューをみたりすると脳にスッと入ってきません。ピアノもそうですね。理論をひと通り覚えて向かい合っても、あまり言うことを聞いてくれないというか、ピアノという相手とコミュニケーションをしている気がしません。それはつまり音楽の本質を掴みとれていないということです。
ツーファイブというのは、音程にすると完全四度、半音5つ分の移動です。この音程での進行は強進行の一つになります。実際、強(弱)進行という言葉はバス部の動きを表すものですので4度上行のみをさす言葉ではありませんが、ツーファイブ進行をトニックに戻るための方便として覚えるのではなく、その印象的な進行感を様々な場面に導入していこうと考えると、作編曲における引き出しを増やしてくれる筈です。
たとえば以下の自作曲を聴いてください。
これも基本的には強進行の連続を意識した曲です。小奇麗な普通の曲ですが形にはなっていますね。ですので強進行をコード的、理論的に単純に捉えるメリットも知っておいてください。また、プロの中にあっても「この人は」と思ってもらうにはバス部をしっかり動かすことです。そうすることによってツマラナイありきたりなコード進行でも音に格調や艶が出てくるものです。
さて、もう一度ピアノで何でも良いですから完全四度の連続を弾いてみて下さい。どうでしょう。正直イマイチな音ですね。これなら短二度、長二度、長三度の移動の方が指も楽だしと思うことでしょうが、実はその通りなのです。音楽はアンサンブルありきですから、ピアノの人が二度下がっても、バスの人が五度下がれば、分数コードになって、機能も響きも変わる上に、その遷移方法や与えられた音価によりサウンド自体がまったく別物になるのです。実は冒頭の曲もツーファイブはリズム的要素として用いているだけでして、根幹部分の進行はフリジアンスケール上のワンツースリーフォーという単純な順次進行だったのです。
ですから、順次進行の持つ力もモーツァルトなどの古典音楽を聴きながら吸収していくことも忘れずに、強進行を跳躍と順次進行、楽器ごとに声部への振り分けで表現していくという基本を繰り返していけば、どんな人にもすぐれた曲が作れるようになるのです。