DTM(デスクトップ・ミュージック)を楽しむためには、どのくらいの性能のパソコンが必要かを見ていきましょう。音楽ソフトウェアは常識的にはデスクトップパソコンで使用するものという風潮もありますが、しっかりとした性能のものであればノートパソコンでも構わないと思います。
パソコンの頭脳にあたるCPUはCore i5以上のものを推奨します。Core i5と言いましても、世代や型番がいろいろありますが、Core i5-560Mなどの第一世代のモバイル版でも許容範囲内です。DTMは昔からありましたし、当時は高速デュアルコアなんぞは憧れの品だったわけです。もちろん最近のcore i5はクアッドコアですから最新のCPUであればなおよろしいでしょう。
では、Core i3はダメなのか・・・そんなこともありません。下表を見れば2012年モデルの箱型macに搭載されたcore i3-3210Mでも十分な数値であることが分かります。これが第5世代にもなるとcore i3でもスコアは高くなるでしょう。DTMといっても基本は作曲ですから、そんなに重い処理は必要ありません。ベートーベンが手書きで楽譜を書いてそれを鍋の下敷きにしてしまったように、アナログ的な部分が作曲のコアになる気もします。ですから、とりあえずコア数が2つ以上で古すぎないものと考えて下さい。
i5-560M | 2638 | 第1世代のノート向け |
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i3-3210M | 3798 | 第3世代ノート向け 2012年Mac Mini |
i5-4570T | 4874 | 第4世代小型パソコン向けの低消費電力モデル |
i5-4570 | 7073 | 第4世代デスクトップ向け |
i7 860 | 5087 | 第1世代デスクトップ向け |
i7-4770 | 9906 | 第4世代デスクトップ向け |
最後にどのくらいの曲が作れるかサンプルを貼ってますので参考にしてください。たいていロクに作曲も出来ずにPCだけは頑張っちゃうみたいな人が多いですが、スマートなノートPCでも後述のCubaseの機能などを使えば許容範囲なのです。i7-860などは第一世代のデスクトップ向け花形CPUでしたから、ほぼ同スコアのi5-4570Tあたりでもかなりの高性能の部類に入りますし、i5-4570までいくと初心者にはオーバースペック気味です(スコア7000なら2020年あたりでもバリバリ現役でしょう)。
末尾にUが付くウルトラブック向けのCPUでも処理能力的には頑張ってくれますが排熱の問題などもありますからおすすめしません(MacBook Airも同様)。せめてガッシリとしたノートや小型のデスクトップを買うか、どうしても薄型のものが欲しいならスケッチ用と割り切って軽い音源を使いながら、家のデスクトップで仕上げをするというスタンスが良いと思います。またcore i7に(一部core i5やi3にも)搭載のHyper-Threading(以下HT)という技術がcubaseのパフォーマンスの邪魔をするということも問題になっており、steinbergのホームページでも問題提起されています。少し注意してみて下さい。macのRetinaディスプレイであったりインテルのHTという技術はsteinberg社とは何ら関係のないものです。互換性などは期待できません。
ではその他のスペック(パソコンの性能)も見ていきましょう。
最近のパソコンはビデオカードや常駐ソフトにも大きくメモリを消費しますので、4Gだと苦しいと思います。ちなみにwindows7のHome editionは16Gまでという制約があり、32Gなどの構成の方はProfessional editionが必要です。windows8はProバージョンでなくても32G使用できます。プロ志向の方は注意です。
OS(オペレーション・システム)は64ビットのものを選びましょう。OSが32ビットではメモリ活用の制約がありますので4G以上のメモリは使えません。さらには映像系のソフトウェアなどは、32ビットパソコンには未対応というものも発売されるようになりました。今後を考えた時には、64ビット環境へ移行するほうが賢明かと思います。
ハードディスクは転送速度に気を付けてください。量販店やカスタマイズ不可の通販で購入する際は5400回転のハードディスクのものが多いので注意しましょう。容量ばかりが売りになっていますが、大切なのは転送速度です。 カスタマイズ時は7200回転のハードディスクを選択して下さい。より良い記録媒体はSSDです。大きい容量のものはあまり安くならないのが困ったものですが、インテル製のSSDなど高品位のものは作曲やデザイン環境をさらに快適にしてくれます。マック派の人は迷わずfusion driveかSSDを選択しましょう。
モニターの解像度は予算や選択の面で一番のネックになります。デスクトップでCubaseをという方はフルハイビジョン(横1920×縦1080または1200)のモニターを購入すると良いと思います。1万円台前半で購入できます。ノートブックで頑張ろうという方はHD+(横1600×縦900)以上のモニターが付属するパソコンが良いのですが、量販店のパソコンのほとんどが(横1376×縦768)という解像度のもので注意です。cubaseの操作パネルはボタンだらけだけに横幅は少しでも余裕が欲しいところです。
スバリこのくらいの値段で買いましょう。買えますよ。
なお、本格的なスキルがついてきた時は、どのようなパソコンにステップアップすれば良いのかも自ずと分かってくるでしょう。おおむねハードディスク以外は倍の性能ですね。ディスプレイも2台です。
CPU | Core i5(ノート向けのデュアルコア) |
---|---|
メモリ | 8G |
OS | 64ビット |
ハードディスク | SSD |
では実際に上記スペックのパソコンでどのような楽曲がストレスなく作れるのかを聴いてみてください。下にいくつかの自作曲を載せておきますので目安としてみて下さい。まず始めに作曲講座でも紹介している弦楽器によるクラシカルな戦闘曲。
上記の曲ですと音数が多い上に音源も良いものを使用しているので、プレビュー時にプチッという音が出て一瞬スローになる時もありますが、まだまだ大丈夫です。
次の曲はシンバルやバックキングの「ジャンジャンジャーン」という音が重そうに聴こえますが、音源自体にうまく収録された音なのでパソコンへの負荷はとても軽く楽にこなしてくれます。
次の曲は7トラックを用いた曲ですが音源自体が軽いため作曲中にもたつきはありません。
オーケストレーションを施す場合も、やはり音源の重さや音数に依存する部分が多いでしょう。以下のような"なんちゃってな"規模の曲ですと、入門機でも余裕があります。
以下のような4人編成のバンドサウンドくらいならお手の物です。ギターなどを録音したものはオーディオ化されます。オーディオデータは多くの音数を入力したMIDIトラックと比べると軽いデータになります。使用するエフェクトの負荷を考慮するだけで良いのです。趣味でやる4人くらいのバンドサウンドは余裕です。
さて、このサイトで音楽理論の勉強をして作曲能力も向上してきますと、本格的なオーケストレーションも視野に入ってきます。ここからが勝負です。次の曲をお聴きください。
これは古典期の規模の楽曲で、オーボエ、ホルン、トロンボーン、ティンパニ、第一バイオリン、第二バイオリン、ヴィオラ、ファゴット、バッソ、チェンバロで構成されています。このくらいの規模になりますとマシンも悲鳴をあげ始めます。たとえハイエンドパソコンであっても前述のフリーズ機能なども駆使しながら編曲を行うことになります。
これがシュトラウスやラヴェルのようなさらに緻密な音構成が必要になってくるとなると、リアル指揮者をやったほうが楽ではないのかという疑問みたいなものが出てきます。曲によってはストレス全開になることが予想されます。
結論を言えば何でも妥協点が必要になりますが、その点に到達したら次のものを買えばよいということです。作編曲初心者はノートPC、中級者はハイエンドパソコン、上級者はどんなパソコンというよりも、むしろ仕事が獲得できるようになりリアル世界での勝負になる気がします。そこそこのパソコンでスケッチしてリアルな楽団と専門のスタジオで録音し、ミックス作業なども違う技術者や業者にお願いする・・・といったスタイルになっていくのではないかと思います。(サンプル曲もスケッチ用の音源を使用しています。)。つまりは中級あたりの方こそ高スペックなパソコン、DTMの全般的な知識や忍耐力が必要になってくるということです。
ソフトウェアやガジェットは難しいですね。インタラクションやインターフェースの基本的な考え方について学んでみましょう。 マイクロ・インタラクション / フィードバック / スイッチ(インターフェース) / ステッパーとプルダウン
様々なインターフェースに触れるのは、ガジェットマスターへの近道です。 インターフェースで採用すべきボタン数(ヒックの法則) / インターフェースの押しやすさ(フィッツの法則)