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和声学

:非和声音について

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メロディを構成する様々な音

ここまでハイドンの天地創造を例として、和声学の基礎を学んできました。セブンスの音すら使わない構成音のみでも美しい曲が作れるということを理解されたと思いますし、むしろそのステップを踏まずにいたら作曲家としては何年たっても二流・三流で終わってしまうということも伝えたかったわけです。そして前ページではテンションなどの知識にも軽くふれましたが、これも次のステップというよりは、違う知識としての学習でした。そこも誤解しないでください。作曲家として高い地位に上りつめたとしても、三和音中心の和声法に揺るぎはないということです。

それでもなお、特にメロディ部分の作成においてはコード構成音以外の音も取り入れたいのだけど、どうやるの?という疑問をお持ちの方がたくさんいると思います。このページで紹介している非和声音を知ると、テンションやスケールの学習にも生かせますし、アーティキュレーションを用いる際も「音楽的に正しいことをしている」という自信を持てるようにもなります。装飾的な効果だけでなく、硬いメロディを補修するような効果もありますので、編曲のみならず演奏家としての味付けにも有用ですからぜひ覚えましょう。

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経過音 けいかおん

英語でpassing note(パッシング・ノート)と呼ばれpassやPの一文字で記されます。コードに含まれる和声音から次の和声音に向かって全音階的、または半音階的に順次進行する中で生ずる非和声音で、弱拍に現れます。弱拍イコール音の価値が低いということですので、4拍子でしたら2拍目と4拍目に現れるとガチガチに考えるよりも、あまり目立たせないと考えると分かりやすいでしょうか。

順次進行で和音を連結する働きがありますので意外性も少なく、使用頻度は高くなりますが、音階を積極的に導入している作者さんからすると、非和声音と難しく捉えていないのかもしれませんね。私もスケール講座で紹介しているサンプル曲はこの経過音:パッシングノートの連続ですが、なるほど骨組み的に考えると(和声学の観点からすると)、非和声音と位置付ける必要性も理解できます。なぜなら厳密な意味では旋律も和音も和声も異なる意味を持ちます。"和声"として度を超した使用を続ければ音楽の本質からはどんどん遠くなってしまう筈です。

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掛留音 けいりゅうおん

サスペンション、sus.と記されます。前の和声音の一部が次のコードの中に残り、いったん不協和になったあと解決します。予備(弱拍部の音)、掛留(強拍部の別の和音に混合)、解決(強拍部の和音に進行)の三段階をもって成り立ちます。予備を取らないものが前述の倚音になります。

音符を少し遅らせて奏する装飾音の一種で、18世紀フランスのクラブサン音楽で良く使用されたというのも導入のヒントになるでしょうか。ワーグナーのトリスタン和音なども有名ですが、アダージョで用いればノスタルジックな効果が期待できそうです。でもたいていは五里霧中になってやり直し・・・なんてことが多いですね。思い切った和声にするけれども、"あいまい"、"うやむや"で終わらせないというのが巨匠のすごさです。

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先行音(先取音) せんこうおん

アンティシペーションと呼ばれ、ant.と記されます。弱拍に現れる非和声音で、次に続く和音構成音の一部が一足先に飛び出し(前もって現れ)次の和音で解決します。機能的には、特定の音を後ろに延ばしながら強拍・弱拍の一定性を崩すことでリズムに変化を加えるシンコペーションと同類です。

こだまする余韻の中で、次の和音の種子が生まれ、すぐさまハッキリとした和音を形成しますのでとても没入感が強いです。

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補助音(刺繍音) ほじょおん

オーグジアリーまたはブロドリーと呼ばれ、.auxかbのの一文字で記されます。和声音の上下を修飾する隣接音のことで、通常は弱拍に現れます。すぐにもとの和音の音へ戻るのが特徴です。

経過音のような単純な順次進行とは一味違い、動揺や軽やかさなど感情表現を多角的に演出してくれるでしょう。

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倚音 いおん

アポジャトゥーラと呼ばれapp.と記されます。非和声音は二つの和音の間に生じるものがほとんどですが、この倚音は一つの和音内で行われます。

非和声音は弱拍に現れることが多いですがこの倚音に関しては、掛留音の予備音がなく、いきなり不協和音が強拍部に現れ2度上行、または下行して解決します。

倚音は転過音という別名も持ちますが、予備を取らない掛留音という意味合いがあります。

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逸音 いつおん

エシャペと呼ばれechとも記されます。フランス語で逃げた音・・・という意味ですので英語表記になるとescと記されます。和声音から順次進行で和声外音に行き、跳躍進行によって次の和声音に進行するもので、弱拍に現れます。

軽く離れて非和声音になり、ポンと跳んで再び和声音に入りますが、この音の遷移は慣れないと見分けが難しいですね。

(このページの参考文献・音楽家を志す人のための楽典/菊池有恒、音楽通論/山縣茂太郎)

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