音楽の仕組みに関する用語を覚えましょう。語路が似ていて覚えにくいもの、もうちょっと深めないといけないこと、音楽を学ぶ途上で何度も忘れてしまいそうな用語をかんたんに勉強してみましょう。(標語や重要用語はそれぞれ別ページで解説しています)
まずは声部・旋律に関する用語を、実生活でもよく耳にする音響用語と紐づけて覚えてしまいましょう。
モノフォニー | 中世の旋法(モード)のもとになった単旋律による構成 |
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ポリフォニー | 多声音楽。和声的というよりは合唱のような音楽。 |
ホモフォニー | 和声音楽。古典派はこれです。 |
フォニー系はたくさんあって、すぐには覚えられないんですよね。でも日本語にすると、「多声」と「和声」では明らかに違いますように、外国の方は日本人ほど覚えることを難しく感じていないかもしれません。「モノ」という言葉を「モノラル」や「モノクロ」と関連付けて覚えれば攻略できるでしょう。
ポリフォニーはポリメロディに細分化するべきですし、この他ヘテロフォニーなども存在しますが、混乱の原因にもなりかねないので、ここでは上記三項目を簡潔に覚えましょう。
モノラル | 1つから音が出ます。 |
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ステレオ | LR、左右から、2つから音が出ます。 |
チャンネル | 多方向から音が出ます。 |
こちらもあくまで簡単に説明しますが、現在ですとモノラルはAMラジオなどで聴くことができます。テレビはほとんどがステレオで音もクリアですね。よく耳にするチャンネル、たとえば5.1chは、自分に向かうように部屋の多方向から音が出ます。大ざっぱに考えれば、和声や旋律線にも似たような違いがあります。
対位法と和声法。これは言葉の違いというより、各々の定義を知る必要があります。
対位法 | いくつかの旋律線とその累積の技法。 |
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和声法 | 和音とその連結の技法。 |
文庫クセジュの「フーガ」には、"対位法は、水平的な書法を垂直的なそれよりも優先させたもの、また旋律線の累積(あるいは多旋律 )を、諸和音の連結(あるいはポリフォニー)よりも優先させたものととりあえず定義しておこう"という記述があります。横の対位法に対して、縦の和声法と捉える向きもありますが、そんなに単純ではありません。
対位法には模倣型であるカノンや、対位法の極みともいわれるフーガなどが存在し、説明も容易ではありません。和声法にも禁則事項や、時代変遷の中で様々な和音が組み入れられてきましたので、これはもう音を出しながら身につけていくしかありません。いずれにしても、古典派の頃までは、芸術家たちが協和音を響かせていくことに情熱を燃やしていたために、現在ふり返ると、規則的で難易度も高く感じます。
今では音大の学生でさえオーケストラを操れるようになりましたが、バッハがその生涯で20人以上の楽団を手中に収めたことは一度もなかったそうです。器楽の違いや編成人員の違いといった、その時代の背景も音楽性に大きな影響を及ぼしているのでしょう。
これも形式に関する用語です。一字違いですが、音楽的な構造には差があります。
交響詩 | 特に決まった構造を持たない。文字通り・ポエム、ドラマである。 |
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交響曲 | 複合三部形式の発展形であるソナタ形式に基づき、4つの楽章によって緩急がつけられ、スケルツォ、メヌエットなども挿入される。 |
ソナタ形式は17世紀にイタリアで、協奏曲的な形式を起源として興りました。交響曲はそのプランに基づき通常4つの楽章から構成されています。アレグロやアダージョ(速い・ゆるやか)という言葉が示すごとく、楽章ごとに緩急があります。第三楽章にはメヌエットやスケルツォなど軽快な音楽が配置されることが多いのも特徴です。構造の差はありますが、管弦楽技法を駆使して作られることが多く、どちらもスケールの大きな楽曲です。(ムソルグスキーの「展覧会の絵」はピアノ独奏用の交響詩とも言われていますから、解釈的には例外もあります。)
ベートーベンの戦争交響曲やブラームスの大学祝典序曲のように、交響曲の番外的作品や、偉大な交響曲の間に挟まれた作品にも素晴らしい楽曲も多いです。"正規"の交響曲ではなくても、その発展を予感するに十分な質を備えています。
では最後に総括も兼ねて、古典派とロマン派の違いについて学びましょう。
古典派 | 平均律や和音の確立によって花開いた純音楽。 |
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ロマン派 | 純音楽をより自由に発展させた音楽。 |
古典派とロマン派の明確な区別は、ロマン派の作曲家たちが古典派にも属するため難しいですが、古典派はモノフォニー、ポリフォニーの時代からバッハへの流れで昇華されていった対位法から、さらに縦の連結を見せた密度ある和音の世界です。一部をのぞいて現代音楽のような過度の装飾性は見られず、縦にも横にも、純度の高い美しい響きが特徴です。ロマン派は古典派をまっすぐ継承しながら、半音階主義的なアプローチや、ポリフォニックに戻るような表現もみられます。若干ではありますが古典派の本質性、密度のようなものが薄れる傾向もあり、言葉を変えればレベルが下がったともいえますが、ブラームスなどの実績にも支えられ、今も燦然と輝いています。果たしてベートーベンやブラームスがどのくらい古典的で、どのくらいロマン派的かは各自が決めれば良いことです。
絵画でも、ルネッサンス、バロック、新古典主義、ロマン主義と変遷していくうちに、同時に複数の継承が見られるジャンルも登場し枝分かれしていくので、その本質性は各自が見極めていかないとなりません。誰々は近代絵画の父だ、近代音楽の父だと言われていて、それを覚えることが学識派のステータスにもなりますが、芸術は単なる学問ではありません。実践を伴わせていけば、新たな、もっと具体的な発見があるはずでしょう。