調性とは何かと聞かれると、答えるのが難しいですね。カラオケで素人さんがキーと言う時は音の高さを意味するのであって、深い意味での調性を示唆するものではないように、特に音楽の勉強を始めたばかりの方は漠然とした考えをお持ちのことでしょう。
五度圏の図は電車における路線図のようなものであり、音楽界ではとても有名な図です。音程でいうところの完全五度の間隔でシャープやフラットが一つずつ増減していくのが分かります。こういった図を見ながらすこしずつ音楽のもつ構造を覚えていくのもよいでしょう。
五度圏 サークル・オブ・フィフス
右回りがドミナントの調でシャープ系、左回りがサブドミナントの調でフラット系になります。基準となる音を完全五度の音程分上げ下げすることで左右にそれぞれ転回していきます。Cで始まる外側の円が長調(メジャー)、Aで始まる内側の円が短調(マイナー)になります。
メジャーの主音(調)の短3度下がマイナーの主音(調)になります。このセクションのはじめにハ長調とイ短調は平行調(順番は違いますが構成音が同じ)という関係にあると紹介しましたが、外円と内円を参照することで平行調の関係にある調がすぐにわかるようになっています。
属調への転調なども、五度圏の図を見れば、右ひとつ隣りのを参照すれば良いだけですのですぐに分かります。完全五度上の属音(ドミナント)と、完全五度下の下属音(サブドミナント)が主音を支え、調の均衡が保たれていることも五度圏の図からはよく分かります。
エンハーモニックの関係
時計でいう6時の箇所で、上記のフラット系の調とシャープ系の調が重なり合います。長調の主音であるFシャープもGフラットも音は同じです。短調の主音のDシャープもEフラットも同じですね。上記はエンハーモニック(異名同音)と呼ばれ、当然ですが聴こえてくる音は変わりません。ですから完全五度の音程を守りながら主音(調)を変えていけば、何回転でもしていけるのです。サークル・オブ・フィフス(5th)という名前も頷けますね。
楽器の調弦(各開放弦の音をどの音に合わせるか)などもCGDAEBという並びに類似したものが多いですし、作曲において重要である主要三和音も、五度圏の図における(基準となる)現在位置がトニック、右に回ればドミナント、左に回ればサブドミナントということを理解しておけば、調が変わってもコードを導き出す作業がスムースになるでしょう。
例えば「10年くらい前にBマイナーから始まるスリーコードの曲を書いたのだけど、残りのコードが思い出せない」といった場合も、五度圏の図から属音と下属音を参照すれば、残りのコードはFシャープ(マイナー)とE(マイナー)である可能性が高いことが分かります。理論を学ぶ前は良い意味でシンプルなカデンツを形成している場合が多いですので、五度圏の図の通りのコード構成になっている可能性も高い筈です。