和声学における禁則事項を学んでいきましょう。禁則を知るというのは好ましい進行を知るということにも繋がりますのでしっかりと学んでいきましょう。
連続進行 | 二つの声部が連続して1度の音程、連続して5度の音程、連続して8度の音程で動かないようにします。 保留音は対象外として扱われるので積極的に活用しましょう。 |
---|---|
隠伏、直行 | 外声部のソプラノとバスが異なる音程から、完全1度、完全5度、完全8度に達する進行は避けます。なおこれらは、それぞれ並達1度、並達5度、並達8度と呼ばれます。ソプラノが順次進行することで違和感がなくなり禁則にはなりません。 |
連続5度や連続8度は例えばバスがドからファ、ソプラノがソからドヘ進行するだけでも、ドとソという完全5度音程からファとドという完全5度音程への進行になりますので、禁則扱いになってしまいます。(減五度進行は許可されます)。
これでは、トニックからサブドミナントへの単純な進行も禁則になってしまいますが、実はここに美しい和声へのヒントが隠されています。
四声部では基本的に根音を重複させ、共通音は保留音を使用、その他の声部もその前後で近い音程分だけ移動させていくと禁則にふれず美しい進行が得られます。(根音に次に重複することが多いのは第五音であり、そして例外的に、増三和音、減三和音および副三和音(II・III・VI)の短三和音に関しては第三音重複とすることが望ましいとされています。)
内声部では保留音を上手く活用し、外声部(特にソプラノ)はゆるやかに動かしてみるのがコツです。
外声部のソプラノとバスが異なる音程から、完全1度、5度、8度に達する進行を避ける。この進行を楽典的にはそれぞれ並達1度、並達5度、並達8度と呼び、並達は隠伏、直行と表現されることもあります。なおソプラノが順次進行している場合は違和感がなくなり禁則にはなりません。
和音の第三音への並達8度はどの声部においても禁則とされています。
並達1度はどの声部間でも避けるのが好ましいですが、完全終止(V→I)においてテノールが導音から主音への短二度上行、バスが完全4度上行して並達1度になる場合は許されます。
四声部と配置のページの復習になりますが、四声部における音程は先に、ソプラノとアルト、アルトとテノールは1オクターブ、 テノールとバスは12度までとすることが理想とされています。
そのほかの和声に関する留意点として、外声(ソプラノ)が6度、7度の跳躍進行した後は反対側へ(順次)進行することが望ましい点や、外声部では増音程による進行は避けるといった点は覚えておきましょう。また、導音からは基本的に主音に進行しますが、ソプラノ以外の声部では属音への進行も可能です。(導音が分からない方は音階のページへ)
冒頭でもお伝えしましたように、好ましくない進行を提示することで、響きのよい(推奨される)進行を教えてくれているのが和声学における禁則の学習ですから「禁則なんて現代には関係ないだろう」という思いを持たれている方こそいろいろ試してみてください。とても美しく健康的な音になると思います。「和声を学ぶと作曲がヘタクソになる」という意見もありますが、そういった人はセンスの無い人であり、一定の曲しか作れない人です。
また、禁則事項のみならず、常時、並行・反行・斜行のバリエーションを上手く活用していくことも大切です。先に紹介したハイドンの天地創造など、偉大な作曲家たちの楽曲はもちろん、わたしのような群小作曲家が講義に使うために作った小曲でも活用されています。(反進行を用いた楽曲の一例)。