Daxter Music

和声学

:カデンツの種類

contact

終止形

終止形について少し詳しくみていきましょう。終止形(カデンツ)というのはラテン語の「下降する」というのが語源となっているそうですが、"川をくだって大河に辿りつく"というような"全体的な流れ"ではなく、節目節目の区切り方と捉えたほうが分かりやすいでしょう。

またよく耳にする「コード進行」と和声学としての終止形が少し違うのは、四声部をしっかりと扱うことに重点が置かれていることでしょう。音楽を学び始めたころは、Cメジャーという和音もドミソと一括りで覚えているだけですので、I→V→I(C・G・C)という進行も、ドミソ、ソシレ、ドミソという密集した音のカタマリの遷移と考えるはずです。

CGCコード進行
初心者が考えがちなCGCの進行

ところがクラシック音楽などではソプラノ、アルト、テノール、バスという四つの声部があり、それぞれが機能的に動きます。I→V→I(C・G・C)も上記から下記のようなイメージに変化します。

大譜表
四声部によるCGCの進行

譜面も大きくなりましたね。ト音記号とヘ音記号の二つが登場する大譜表を用いて四つの音を組み合わせてこそ和声であり、クラシックにおける進行形、カデンツになります。これらを踏まえて各終止形を見ていきましょう。

ページの始めに戻る

完全終止

まずはじめに終止形の基本である、完全終止という進行をみていきましょう。ルールは以下になります。

完全終止の特長
ルール ドミナントからトニックへ連結し、なおかつソプラノが主音で終止する。
注意点 ドミナントからトニックへの連結においてそのどちらかが転回形になるときは不完全終止となる。
効果1 サブドミナントを挟むことで音階音がすべて示され調を明瞭に示す効果がある。
効果2 トニックの第二転回形はドミナントへの倚和音として終止感を強くする働きがある

完全終止形
完全終止形の進行

完全終止

基本的には冒頭でも書きましたようにV→Iという、ドミナントからトニックへ進行することが完全終止です。ドミナント(V)の前は特に決まりはありません。効果1・2に書きましたように倚和音といった非和声的なものが響きのよい和声に変化したり、サブドミナントによって調を明示したりと、転調した場合などにもいかせるような働きもたくさん考えられます。 カデンツのベースになるのがこの力強い完全終止になります。

ページの始めに戻る

不完全終止

完全終止において、ドミナントあるいはトニックに転回形を用いると終止感が弱まり不完全終止になります。

不完全終止形
不完全終止形の進行の一例

ドミナントやトニックに何らかの転回形を用いれば不完全終止となります。音楽耳になっていないとあまり差が分からないかもしれませんが、終止形を理論的に学ぶことで、メロディラインとバス部を変化させながら様々なバリエーションで作曲できるようになり、コントラストが強すぎたコード進行もなめらかにすることが出来るようになります。先に学んだ終止の四六などもそうでしたね。

さてここでサンプル曲を聴いてみましょう。

IV→V→ I(第一転回形)、 II→V→Iという進行です。先に不完全終止、その後に完全終止です。終止形だけ聴いてもなんだこれはという感じですが、作る側も終わりだけ作るのは大変なんです。ツマラナイ曲ですみません。

ページの始めに戻る

半終止

半終止はドミナントを用いてひと区切りさせることです。

半終止
半終止

弦楽四重奏などは弦楽器のページでも紹介していますようにバイオリン、ビオラ、チェロ、場合によってはコントラバスも含めて四声部による濃密なカデンツを聴かせてくれますが、半終止でアクセントをつけることも多いです。

ページの始めに戻る

偽終止

トニックの代理和音であるVIを用いた、V→VIのような進行を偽終止と呼びます。

偽終止
偽終止

たとえばCメジャーキーのVIはAmですが、その構成音はラ・ド・ミになります、言い換えればIの第一転回形(ソ・ド・ミ)のバス部が長二度異なるだけで後は同じですので、不完全終止と同様に終止感が弱いものになります。似てるけど違うから偽の名がつけられたかは定かではありませんが、たとえばラドミを構成音に持つ和音はC6、C7(13)、D9、FM7などなど様々ですから、単純な終止形で力強い曲が書けるようになりましたら自分なりの和声を生み出していきましょう。

ページの始めに戻る

変格終止

サブドミナントからトニックへの進行は変格終止と呼ばれます。先に述べましたが、正格に比べると柔らかく女性的な進行で、古くはミサやレクイエムにおける終止形として必ず用いられていたためにアーメン終止とも呼ばれました。

変格終止
変格終止

IV(サブドミナント)の前はIの全終止、VIの偽終止が置かれることが多いのが特徴です。

ページの始めに戻る

参考文献

名曲で学ぶ和声法 /柳田孝義

人気コンテンツ daxter-music.jp

人気コンテンツ daxter-music.jp