実践基礎:総合作曲編の第1回目は和声学のセクションを復習していきましょう。
作曲の基本形にはトニック(T)→ドミナント(D)→トニックという進行形の正格カデンツと、トニック(T)→サブドミナント(S)→トニックという進行形の変格カデンツがあり、それらを組み合わせたT-S-D-Tという複合カデンツも紹介しました。古典的にはドミナントからサブドミナントへの進行(D→S)は禁止されています。最近のポップスなどでは乱用されているそうですが、やはりトニックを軸に正格終止、変格終止を繰り返すほうがメリハリが生まれるのは確かです。またドミナントがセブンス・コードであればさらに終止感が強まるという話もしましたね。
それから副三和音の存在も学習しましたが覚えていますでしょうか。下図を見れば分かりますが、ハ長調におけるC、F、Gという主要三和音以外のコードもトニック、サブドミナント、ドミナントの機能を有しているということです。これらの代理コードも併用しながらコードを進行させていきます。
教則本やネットを見渡すと、イチロクニーゴーですとかツーファイブといった進行形で溢れかえっています。さらに言えば、せっかく覚えたのに大した響きじゃないなぁ・・・なんてお考えの方も多いことでしょう。そんな方は正格は"ガツン"、変格は"やんわり"という特徴を覚えて、オリジナルのコード進行を生み出していくほうが早道であるかもしれません。
T=トニック、S=サブドミナント、D=ドミナント
それでは「興亡夢幻」という自作曲の基礎実践用編曲バージョンをお聴き下さい。
この曲はT-D-T-Sという進行を二度繰り返しています。正格と変格という繰り返しです。理論にすれば簡単ですが、ピアノを前に指を3本用いてC・G・C・Fと音を出しても、このような曲にはなりません。
クラシック音楽の素晴らしさはその構成法にあります。オーケストレーションのなせる技とも言えましょうが、CとGの連結というよりも、むしろどのように分解するかにあります。一度解体し連結するというイメージです。これが出来ないとやたら高音部に頼ったり、似たような曲しか作れなかったりという結果になります。
モーダルインターチェンジ?・・・そんなもの必要ありません。実績の無いうちは「こいつもか!」と作曲家の間で笑いものになりかねません。とにかくフワフワと風に吹かれていくことばかり考えず地に足をつける快感を覚えましょう。ルート、3度、5度の音の力を信じることです。あきらめないことです。必ず不変の音を引き出す瞬間が訪れる筈です。