ここまでは4種類の三和音と、それが発展した11種類の和音を学びました。11種類の和音に関しては「見たことあるなぁ、意味は知らないけど・・・」といった感じだったかと思いますので、少しずつ覚えていけば良いと思います。セブンスコードやデミニッシュコードを使わなくても良い曲は書けますし、名前は知らないけど鳴らしていたということもあるでしょう。
下の図はハ長調(Cメジャー)における音階の構成音に、3度高い音をそれぞれ二つずつ足した、いわゆる三和音(トライアド)の連なりです。この時、星のマークがついたC、F、G(I、IV、V)を主要三和音と呼び、その他の和音を副三和音と呼びます。
ハ長調の構成和音における力関係
主要三和音のうち、I(C)をトニック(トニカ):主和音、IV(F)をサブドミナント:下属和音、V(G)をドミナント:属和音と呼び、和音進行の根幹に据えます。もちろんこれはハ調(ド・C音を主音にした時)における分類ですので、レ・D音が主音(二調)になれば、Dが主和音、Gが下属和音、Aが属和音になります。そのための目安としてローマ数字が割り振られています。調の主音から数えてI、IV、V(イチ・ヨン・ゴ)と覚えましょう。
トニック、サブドミナント、ドミナントの均衡図
少し見方を変えてみましょう。上図を見ると、主和音(トニック)の完全五度下にサブドミナント、完全五度上にドミナントが位置していることに気づきます。主和音は下属和音と属和音にバランスよく支えられ、この両ドミナントの助けをかりて、主としての力を最大限に発揮しているのです。
さて、トニカ、ドミナント、サブドミナントの組み合わせをもう少し研究してみましょう。下のテーブルデータでその働きと類似性を示します。
I(トニック) | 調の主音ですので安定感があり、どの和音へも進行が可能です。III、VI(ハ長調におけるAm)にも同様の機能があります。 |
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V(ドミナント) | トニック(I)に進もうとします。属七の和音{ハ調におけるG7:ジーセブン=G+短三度(ファ)}になるとその機能がさらに増します。VII(ハ長調におけるBdim)もほぼ同様の機能を持ちますが古典派の楽曲ではあまり使われません。 |
IV(サブドミナント) | トニック(I)、ドミナント(V)両方に進もうとします。II(ハ長調におけるDm)にも同様の機能があります。 |
T=トニック、S=サブドミナント、D=ドミナント
I、IV、Vの和音の(主要三和音としての)地位に揺るぎはありませんが、副三和音にも同様の機能があることが分かりました。副三和音は代理コード(代用和音)とも呼ばれています。上の図で各三和音のもつ機能・類似性を再度確認してみてください。構成音的に当然とも言えますが、トニック、サブドミナント、ドミナント共に、仲間が3度音程間に存在しています。
たとえば、ある音階における主音の短二度下の音は導音と呼ばれ、旋律を安定させる機能を持ちます。自然短音階の第7音に、導音としての機能を持たせた和声短音階と旋律短音階が作られたのはそのためでした。この半音の働きを発展させて考えますと、「シ」および「ファ」を含むG7やBdimはそれぞれ短二度音程の「ド」と「ミ」へ「安定」をもとめて移動するのが基本と言えます。ですからその構成音を考えればVとVIIの機能は類似していることが理解できますね。当然、その受け手になる、構成音に「ド」と「ミ」を持つIとVIも大ざっぱに言いますと同じ機能を持つということになります。
それではトニック、ドミナント、サブドミナント、代理コードを1回ずつ使ったシンプルな曲をお聴き下さい。
とてもなめらかで力強い感じがしますね。先ほどの機能・分類表をよく眺めていると、知識として活用できる筈です。もちろんこの他にも様々な応用・発展形があります。たとえばVからトニックの代理和音であるVIに進んでひと段落をつけることを偽終止と言いますが、これはやはりIとVIでは厳密な和音の機能としては相違があるということを表しています。(とりあえずここでは似た構成音を持つ和音には同様の機能・働きがあると覚えて次のステップに進みましょう。)