合唱曲や弦楽四重奏曲をはじめとして、主な和声音楽は4つの音域(四声部)によりバランスよく構成されます。四声部は高い順にソプラノ、アルト、テノール、バスに分類され、人間のもつ声域とも合致しています。音域的にはC2~C4の内部および近辺を進行しながら和音を構成しますが、その構造体は下図のように、開離と密集に分別されます。
開離和音 | 開離配置(位置)とも呼ばれ、その名のごとく、密集和音がその構成音に倣いながら転回した形になります。上三声の各声部間には必ず構成音が入るだけの間隔があり、なおかつ1オクターブ以上は開離しないという規則があります。テノールとバスの間隔は密集位置と同様に12度以内になります。 |
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密集和音 | 密集配置(位置)とも呼ばれます。今まで学んできた三和音などはすべてこの形でしたね。謂わば転回前の分かりやすい和音構成です。上三声は1オクターブ以内に密集します。テノールとバスの間隔は12度以内になります。 |
ソプラノとバスを外声、アルトとテノールを内声、ソプラノ、アルト、テノールの高い声部をまとめて上三声、アルト、テノール、バスの低い声部をまとめて下三声と呼び、それぞれが"ひとまとまり"で機能的な動きをする場合があります。
それではハイドンの「天地創造」における有名な合唱部分を聴きながら、開離和声と密集和声について学んでみましょう。原曲は四声部に分かれた美しいコーラスですが、ここでは各声部に個別の楽器を割り振っています。
四声部によるコーラスを聴いてみましょう。
内声部(特にアルト部)は比較的穏やかですが、外声部の変化が大きいことが分かりますね。ソプラノが旋律部を担当しバスが補完的な役割を担っていることが分かります。この形は一つのスタンダードと言ってもよいでしょう。密集と開離の譜面をよく見比べてみてください。斜進行(一声部は同度にとどまり、他の一声部が進む)、平進行(二つの声部が同じ方向に進む)、反進行(声部が反対に進む)がバランスよく配置され、コード単体だけを提示されるだけでは気づかないですが、実は四声部のすべてが輝いているのです。反進行もただ交差させるのではなく音をバトンタッチしているので和声としての機能は失っていません。
ハイドン「天地創造」合唱部の密集配置(アレンジ)
上の譜面は慣れ親しんだ和音の形(密集)に配置し直したものです。各和音下の(SB)という表記はソプラノとバスが同じ音を担当しているという機能的重複音を表しています。こんなシンプルな進行でも、透き通った心地よい印象だけではなく力強さも与えてくれています。音楽を長く勉強していく根性があれば、ありきたりの曲は作れるようになりますが、こういったC・F・Gというシンプルな進行で音楽の本質を表現していく力はなかなか向上しません。ぜひ三和音+次ページの終止の四六などの進行を、より多声的に学んでみてください。