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和声学

:セブンスとテンション

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セブンス:四つ目の構成音

7回にわたり、和音の基礎を学んできました。ここまでの知識で作曲は可能ですが、ここからは四和音(セブンスコード)の世界を紹介していきましょう。ちなみに以前のページを読んでいない方は、全て復習してからこちらに進んでください。作曲はセブンスあってこそ!という認識が必ずしも正しいとは言えないことをハイドン先生が教えてくれたと思います。しかしベートーベンもショパンも誰しもがセブンスやナインスの音を使って作曲していますのでサクッと学んでみましょう。このページの内容を叩き込んでも今すぐに作曲能力は向上しませんが、ここも通らなくてはならない道なのです。

セブンス
四和音(セブンスコード)

ではCキーの白鍵だけを使用したセブンスコードを見てみましょう。セブンスといっても四和音のことですから、今まで学んだ三和音にもう一つ音が追加されただけです。無印の7(セブンス)とmaj7(メジャーセブン)の違いは学習済みです。見慣れないのはBm7(b5)だけですね。Bを基音にした三和音は構成音がシ・レ・ファになりますので、dimディミニッシュ・コード(減三和音)でした。そこに長三度を加えて四和音を構成するので、BdimMaj7(ビー・ディミニッシュ・メジャー・セブン)と呼ぶことも出来ましょうが、一般的には上記のように第五音をフラットさせたマイナーセブンと呼ばれることが多いです。ビー・マイナー・セブン・フラット・フィフスと読みます。

譜面上ですと響きの違いが掴み難いですが、セブンスコードはその構成音により性質も異なってくるとも言えましょう。古典的にはドミナントのセブンスコード(Cキーの場合はG7)を属七の和音、それ以外のセブンスコードを副七の和音と呼んで区別しています。

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テンション

特に現代音楽では、セブンスよりも多くの音を積み重ねていくこともあり、それらをテンションと呼びます。ナインス(9th)、イレブンス(11th)、果ては13thまでありますので、ハ長調で考えれば7つの白鍵をすべて叩くことになります。大ざっぱに、セブンスはルートの1音前、ナインスはルートの1音後と覚えるのも良いでしょう。ですからピアノの場合は3和音を押さえている指を、そのまま一つずつ左に移動すると、(厳密なポジションは別途おぼえる必要がありますが)とりあえず7th、9th、11thの音になります。

Cメジャー・キー(ハ長調)におけるアボイドノートとアヴェイラブル・テンション
コード アボイド テンションとして利用可能な音
(アヴェイラブル・テンション)
Cmaj7
イオニアン
ファ(音階音の4・11番目) (9th)、(13th)
Dm7
ドリアン
シ(6・13番目) (9th)、(11th)
Em7
フリギアン
ファ・シ(2・9番目、6・13番目) (11th)
Fmaj7
リディアン
なし (9th)、(#11th)、(13th)
G7
ミクソリディアン
ド(4・11番目) (9th)、(13th)
Am7
エオリアン
ファ(6・13番目) (9th)、(11th)
Bm7(b5)
ロクリアン
ド(2.・9番目) (11th)、(b13)

アボイドノートとアヴェイラブル・テンション クリックで拡大

属和音の特徴などでも説明しましたが、半音の差は移行時には機能的ともなりますが、同時に鳴らすと濁ってしまう場合もありますので、上記のようなテンションを使い分けるのが一般的になっています。例えばCmaj7ですと11thのテンションにあたるファの音は通例(目立つような)使用を避けます(アボイド・ノート)。4度の音は使用に注意すると考えても良いでしょう。11thと13thは、はじめに勉強したsus4(サスフォー)や6th(シックス)と同じ音にもなりますので、五線譜上であまりに密集していると「こっちにくるなよ」という音符の声が聞こえてきそうですから、コード構成音の選択時には第五音を構成音から除外(オミット)するなどの工夫が必要になります(後述)。

メジャー系は音階音の4番目の音(つまりは1オクターブ高い11番目も)、マイナー系は音階音の6番目の音(つまりは1オクターブ高い13番目も)がアボイドとなり、Em7、Fmaj7、Bm7(b5)を例外的に付随して覚えると簡単です。

さてその効果ですが、セブンスやテンションを使用すると、たしかに洗練された感が増します。音の数の分解像度が上がるというか、アナログがデジタルになるような、透き通った印象を受けます。アボイドノートはジャズ理論の一つですから、三和音を中心とした各和音を四声部にふりわけながら機能的に遷移させることで美しさや密度を加えていく古典音楽とは若干おもむきが異なります。あくまで個人的意見ですがジャズを基盤としたコードワークだけでは満足に至りません。(クラシック音楽では調性プランやスケール感の醸成のために属九の和音をよく用います。)

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セブンスコードの転回形

さて、ここではセブンスコード(四和音)の転回形を見ていきましょう。

第一、第二転回形までは、三和音の時と同じです。第3音を最低音とした第一転回形は第7音と主音との音程から五六の和音、第5音を最低音とした第二転回形は第7音と主音との音程から三四の和音と呼ばれています。

セブンスコードにおける第一、第二転回形
セブンスコードにおける第一、第二転回形

セブンスコードには第7音がありますので、当然のことながら、その第7音を最低音にした転回形も存在します。これが第三転回形に該当しますが、主音までの音程(2度)から二の和音とも呼ばれています。

和音の転回形 第三転回形
セブンスコード(四和音)の第三転回形

なお、セブンスコードでは第五音が省略されることが多いです。下の譜面を見ていただくと分かりますが、Cメジャーセブンの構成音(ドミソシ・CEGB)のうちのソ・Gの音が省略されています。これはナインスコード(五和音)でも同様です。

セブンスの第5音省略
セブンスコード(四和音)の第5音省略

このように転回形に馴染んでいくと、いざ楽譜を見たときに「なんだこのオタマジャクシは!」と慌ててしまうことも少なくなると思います。楽曲分析(アナリーゼ)においても、和音を拾っていく作業はとても重要になりますので、少しずつ慣れていきましょう。半音間の遷移やルート音、中音(第3音)の遷移などを通して、コード進行をなめらかにしたり、驚きを与えたりすることは作曲においての一番大切なことですから、コード単体を解析(分解)するというより、前後のコードとの繋がりを考えていくと向上します。また、転回形は和音の機能も変えてしまうのですが、そういった機能的なことはこの後学んでいきましょう。

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