実践基礎:スケール編の第5回目はスパニッシュ・スケール関連です。
スペインといえば、私の場合はミロやタピエスといった画家が浮かびますが、みなさんの場合はどうでしょう。玉石混交に加えビミョーな検索システムが定まった現代は流されやすい時代だと思います。音楽でも絵画でも良いものを見つけ理解する力は必要ですが、残念ながらタピエスまで行きついてさらに理解している人は希少かもしれませんね。
さて、教会旋法など通常のスケールは7音ですが、スパニッシュ音階は8音構成です。下記の表を見て頂くと分かりますが、フリジア旋法に3度のメジャーであるE音(Cメジャーキーの場合)を加えただけでスパニッシュ・スケールになるのです。これにより、インドの音階(マールワー・タート)やオリエンタル音階(マカーム・ナワサル)のように連続する半音のピッチが発生し、音の流れが独特になるのです。スケールは和音と同じで、全く別の名前が付けられていても構成音がほとんど同じというケースがありますので覚え方も工夫一つです。
C | D | E | F | G | A | B | ||||||
スパニッシュ・スケール | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ||||
フリジアン・スケール | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ |
スパニッシュスケールの構成音
フリジアン・スケールに1音足すとスパニッシュ・スケールになるのは前述の通りですが、1音ずらすとハーモニック・マイナー・スケール・パーフェクト・フィフス・ビロウという音階になります。和声的(ハーモニック)短音階ですので全音+半音という大きめのピッチがあるのは覚えておられるでしょうか。
C | D | E | F | G | A | B | ||||||
スパニッシュ・スケール | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ||||
フリジアン・スケール | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | ♪ | |||||
ハーモニック・マイナー パーフェクト5thビロウ (フリジアン・ドミナント) |
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パーフェクト5thビロウというのは完全五度下という意味です。漢字体のほうがしっくりくるかもしれませんね。別名はフリジアン・ドミナント・スケールとなります。5度下という名称よりも、あるマイナースケールのドミナントの音をトニックにしたと覚えると良いです。
それでは自作の「Sp guitar in A」という曲の基礎実践用編曲バージョンをお聴き下さい。
Harmonic Minor Perfect 5th Below
曲と言うよりはアドリブのフレーズサンプルですが、コードAmをバックにAナチュラルマイナー、E7に遷移したところでAハーモニックマイナーで弾いています。下行する箇所では古典学習的にナチュラルマイナーに戻りますが、どちらでもさほど印象は変わりません。(混乱している方は音階のページが全ての基礎になりますので復習してください)。
このようにAがキーの時は、ドミナントであるE7のコードに合わせてAハーモニックマイナーを弾けば、コード遷移もスムーズかつ、スケール構成音上、スペインテイストというかエスニックな香りを演出できます。構成音的に通常Amに解決すると良いと言われていますが、このサンプルの様に違和感さえなければ答えは一つではありません。名前的にはフリジアン・ドミナント・スケールですからマイナーコードに解決する(そのキーにおける)ドミナントに用いるスケールだと覚えておくとよいでしょう。理屈っぽく覚えるのではなく、"Im-V7の箇所ではこのスケールを"・・・という感じでネタを引き出しに入れておきましょう。
階調の変化により聴き手の心は揺れ動きます。 心理の特性について学んでみましょう。 メンタル・アカウンティング / ヒューリスティック / 保有効果 / プロスペクト理論 / フレーミング効果